「殿ってときどき意表をつきますよね」
左近の言葉に、ぴくり、と三成眉を上げるが、無言でそっぽ向いた。、
「意表をついて、最後の最後で……間抜けですよねえ……」
と左近はため息をついた
「戦に勝って、軍も無事返して……なんでそこで怪我するんですか?」
まだ後始末が残ってるのに……とぶつぶつ
「うむ、見事なこけ具合だったな!!」
とはその場に居合わせた兼続
「うるさいわ!!」
「大した怪我でなくて良かったではないか。」
「しかし、今人が少ないんですよ、指揮する人がこの状態ですから俺も色々回んなきゃいけないし、誰か看てくれる人いませんかねえ。」
「むう、おねね様も帰ってしまったしな。」
「なんでおねね様なのだ。」
母親代わりともいえる女性を思い浮かべて、むすり とすねたような顔になる三成、だがすぐ表情を変える。
「ふん、抜かりはない。全ては計算どうりだ!」
「はあ」
「幸村に知らせた。」
「ほう」
「幸村に看病してもらう、お前らはとっとと仕事にかかれ。」
「そ〜ですか」
嬉しげな三成に左近も呆れ顔だ。
だが兼続は首を傾げている。
「なんだ兼続?」
「幸村はもしかしたら……」
「にぎやかですなあ、若いと元気があってよろしいですなあ。」
と、赤い鎧に白く長い鉢巻を揺らしながら一人の『若武者』が入ってくる。
「……あ?」
三成それを見た瞬間固まる。
「少々の怪我などほっといても治ると思いますが、わしが調合した秘薬でも塗っときますか?」
そういって、見た目『幸村』は、異臭を撒き散らす筒を取り出した。
「な、な……」
「え〜と……幸村じゃあないですよね、影武者ですか?」
固まったままの三成の横で左近が鼻を抓みながら対応する
「ふうむ、すぐにばれましたな。」
「それはまあ……幸村はどうしたんです?」
「それが……先の戦で兄である信幸様が怪我をされたようでして」
「おお、そうらしいな」
と兼続も頷く。
「すっとんで行きました。」
「ほう、すっ飛んで」
「…………」
三成は固まったまま戻らない。
「ではわしが看ときますからな」
「…………」
「あ、じゃあ行きますんで」
「…………」
「うむ、天の与えた貴重な休みと思うのだ三成!また後でな!」
と2人は鼻を抓みながら出て行った。
「…………」
「では早速この薬を……」
うきうきと蓋を開ける、
つ〜ん と更に強くなる刺激臭に
「………くっ」
三成の目に涙が浮かぶ
「殿、本当に最後の最後で……間抜けですなあ……」
おわり もどる